「さまよう刃」 東野圭吾 朝日新聞社 ☆☆☆☆☆☆(10点中)
<蹂躙され殺された娘の復讐のため、父は犯人の一人を殺害し逃亡する。「遺族による復讐殺人」としてマスコミも大きく取り上げる。遺族に裁く権利はあるのか? 社会、マスコミそして警察まで巻き込んだ人々の心を揺さぶる復讐行の結末は!? >※amazonより参照
作者の東野さんは今年の直木賞を「容疑者Xの献身」で受賞されたとのこと。
おめでとうございます。
私の受賞に関する感想としては、「まあ、妥当なんだろーなー」
という感じ。(ファンの方、偉そうな感じですみません)
特にファンではないので、そんな程度ですけど、
もう6回目のノミネートとのこと。それだけノミネートされるくらい
話題にあがる作品をコンスタントに書かれているのは
すごいことなんだろーなー・・・。
確かに、東野作品って、本屋さんで帯を見たり、
あらすじ読むとなんかすごい面白そうな気がして
つい買ってしまう。
実際に読み始めても、その日のうちに
一気に読みたくなってしまう、スピーディで
面白いストーリー展開。
じゃあ、なんで私はファンとは言い切れないんでしょうか、
といいますと。
今年の直木賞選考会でもやはりそこで揉めたようですが、、
私も感じる東野作品のほとんど唯一?といっていい
気にかかるところ。。
なんかね、人間描写が薄味すぎるなあ、ステレオタイプだなあと
感じる時がある・・・・。
ストーリーも登場人物も設定は決して軽くない、というか、
重〜〜〜いストーリーで、主人公も
かなり暗い過去の持ち主だったり、すごい悩みを抱えている
という設定だったりするんですけど、「その割には・・・・??
」みたいな心理描写やセリフが妙に気にかかる。
まあ、私は自分がかなりセンチメンタル人間なので、
比較的、登場人物も濃い目というか個性的な人が好き。
だから、単なる個人的な好き嫌いの問題
なんでしょう。理系思考の人と文系思考の人間の差も
あるしね。
最初に読んだ、東野氏のデビュー?作品「放課後」
での人間描写に疑問が多すぎて、ずっとその印象がぬぐえないまま
来ているってのも理由のひとつ。
さて、前置きが長くなりましたが、「さまよう刃」の感想。
前述の「いつも東野作品に感じる登場人物のセリフの薄さ」
がこの作品ははあまり、気になりませんでした。
というのも、主人公の行動の理由が、「ひどい死に方をした
娘の仇をとりたい」という読者が非常に感情移入しやすい理由。
レイプされて、薬を打たれ、死に至る娘の描写がかなり
女性にはつらくなるほど、残酷な描写で、
でも、その部分のせいで、主人公の父親の執念は
十分伝わってきました。
この未成年の犯人達の「薄ら寒い、、頭の悪い感じ」も、よく出ていると思います。「言葉の通じない感じ」ともいえるでしょうか。
犯人側の心理を細かくは追わないことで、かえって、
「現代の、自分のこと以外なにも考えない、
虫みたいな若者像」がリアルでした。変に詳しく犯罪にいたるまでの
理由だの生い立ちの不幸とかを描くと
おかしなことになったと思う。
だって実際にそういう事件を起こす若者って
「何も考えてない」もん、多分。
ほんとにね、読んだ人みんなが考えて暗い気持ちになるでしょう。
「もし・・・これが自分の身の周りで起きてしまった
できことだったら・・・??」って疑問。
どれだけ穏やかな生活、枯れた生活を送っている人でも
他人事ではない現代だと思います。
現実に残酷な事件が毎日嫌になるほど、起きている。
考えると嫌な気分になることだけど、特に男の人には
娘が居ない人でも、妹、恋人、友達に当てはめて
真剣に考えてほしいと思う。
「ベルセルク」 (現在29巻) 三浦 健太郎 白泉社 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
<鎮守府・ヴリタニスに入ったガッツ一行はエルフヘルムへの船の調達に苦心していた。そんな中、港に立ち寄ったシールケは人買い商人(元・海賊)に追われるクシャーンの子供たちをかばい危機に陥る。彼女らを助けようとするイシドロ、ミュールは海賊たちと大立ち回りを演じる。子ども達だけでこの危機を乗り越えられるのか? 2005年9月刊。>※s-book.comより
言わずとしれた、ダークファンタジーコミックの決定版。
私も最新刊をまだか、まだかと楽しみにしている一人です。
結構エログロな場面も多いので、
体調が悪いときはあんまり読む気のしない漫画ではありますが、
とにっかく、
話が濃い!!
絵が濃い!!
読み応えありマス!!
登場人物が非常に多く、そしてそれぞれちゃんと独特の個性
と魅力があり、そして、その大人数の大体80%くらい
死んでしまってるかも・・・・。

「あ、このキャラ好きだわ〜〜。応援しちゃうな〜〜

いい人だし、味があるキャラだから、普通の物語なら
なかなか死なない役だよねっ♪」
と思ってると、すぐ足すくわれます。
キャラ描写が上手いだけに、読者にとってもキッツい。
主人公のガッツ以外はほんと、油断も隙もありません。っていうか、ガッツでさえ、満身創痍。
最初は結構正統派のがっしり系ハンサムさんだったはずの
ガッツも、今では片目もないし、片腕も・・・・(泣)
最近では「あくまのよろい」(ドラクエ風に言うと)を装着してる
からよく化け物化してしまう。
ワイルドな魅力は増したけどさ。無茶苦茶ですわ。
ヒロインはいろいろあって、ただ今、正気を失って、、はや何年??
なんつっても、5巻くらいから始まる「黄金時代」といわれる
ガッツの唯一の青春ぽい時代、それが大体13巻あたりに、
「蝕」っていうおっそろしい儀式で、ものすごい結末を迎えますからねえ。
でも、この青春時代の終わり方のせいで、この物語は今までの
日本のファンタジーの世界を全く違う次元に変えてしまったかも
しれない。それくらい、ガッツの選択、そして
ガッツの盟友であったはずのグリフィスの選択は
重く、あまりにも激しく哀しい。
ガッツの生涯をかけての宿敵となっているグリフィス、
この人の物語も見事です。この人の選択が
ガッツと、ガッツの周りすべての大事な人たちを地獄に
叩き落したけれど、それでも、たぶん読者もガッツ自身も、
グリフィスを100%「敵」として憎めていないでしょう。
グリフィスとの再会を、望んでいる。その気持ちは、
「倒してやる」だけではない。「なぜ?」と聞きたい、
答えは判っていても。そう思わせる、魅力が確かにある。
第一回「蝕」のあと、ガッツの絶望時代がしばらく続き、その後、
今29巻くらいまでは、比較的、
ベルセルクの中では穏やかともいえる、
「ガッツがまた、新たな仲間を少しづつ得ていく姿」
が丁寧に描かれています。
今までの展開のスピードになれていた人にはちょっと
のろのろしているように感じて、いらいらしちゃうかも。
でも、私にはこれ、第二回「蝕」への作者の壮大な
前フリなのかも、と思えて、かなり不安・・・というか
引っ張られれば引っ張られるほど、ドキドキしちゃう。
今度、蝕がおきても、やっぱり誰一人、死んで欲しくないわ〜〜!
グリフィス側の狙いもまだ、謎も多いし。
100巻くらいまで続いてもいいです、
三浦先生、お願い、この物語を先生が納得いくまで
完成させてください。
「カンガルー日和」 村上春樹 講談社文庫 ☆☆☆☆☆☆☆☆(10点中)
<時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡い哀しみと虚しさ。都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げるハルキ・ワールド。ここに収められた18のショート・ストーリーは、佐々木マキの素敵な絵と溶けあい、奇妙なやさしさで読む人を包みこむ。>※amazonより参照。
私は村上さんの本は長編より短編集がどちらかというと好きで、
その中でも一番この「カンガルー日和」が好きです。
挿絵、装丁もいいし、春樹風ファンタスティック
ワールドが、いい意味で力を抜いた感じで、ユーモアあふれて
書かれています。
私が思う、村上春樹さんの作品の美点のひとつは
なんといっても「言葉の選び方」が
見事だ、、、というのがあると思う。
なんだか、内容に関係なく、クセになるフレーズ、
ここちよい単語が多いのです。
この本だと、「とんがり焼きの盛衰」。
この短編、内容もマジで面白〜〜い。素直に笑ってしまった。
「とんがり焼き」、ツボだわ。
表題の「カンガルー日和」って言葉もいいですよね。
「カンガルー日和」ってどんな日のことよ?
想像してるだけで楽しくなってくる。
力の入り過ぎない、スタイリッシュだけど、ほっとするような
ショートショートの短編集です。
ちょっと頭が疲れてる時に読むといいかも??




